2024-10-04

代理出産 倫理的問題

代理出産 倫理的問題

代理出産は社会の道徳的基盤に対する挑戦か、それとも不妊カップルにとっての救いか?

2022年、ウクライナ戦争がスタートし、国境が閉鎖されたために実の親と連絡が取れなくなってしまった(代理母から生まれた)赤ちゃんの映像が世界中に拡散され、代理出産の倫理的側面に関する議論が激化したのは記憶に新しいところです。

代理出産は、生殖医療技術の発展に伴い注目を集めている話題ですが、同時に倫理的問題も取り上げられています。不妊夫婦が子どもを持つ権利、代理母の人権や尊厳、子どもの福祉など、様々な立場と観点から問題が指摘されています。

また、代理出産の是非をめぐっては、不妊に悩む夫婦の間でも意見が割れることがあります。子どもを持つことへの強い願望から代理出産を希望する一方で、倫理的、心理的、経済的、世間体(他人の目、親の目)など、様々な懸念から代理出産に踏み切れない夫婦もいます。夫婦間や家族間で代理出産に対する考え方が異なる場合、お互いの感情や価値観を尊重しながら丁寧に対話を重ねることが大切です。専門家からのサポートを受けながら、皆が納得できる結論を見出していくことが求められます。

代理出産の倫理的問題について議論する際は、関係者すべての人権と尊厳を尊重しつつ、社会的、法的、宗教的、そして医学的な影響も考慮に入れる必要があると言えるでしょう。

倫理的問題を語る前に『代理出産の定義』

本記事で取り上げる代理出産とは、代理母(女性)が、他の夫婦に代わって、子供を身ごもり、出産するプロセスを指しています。別記事(代理母について)でも触れましたが、代理出産は2つに分別できます。

①「伝統的代理出産(サロゲートマザー型)」

・代理母自身の卵子を使用サロゲートマザー型では、代理母自身の卵子が使われるため、代理母は赤ちゃんの遺伝的な母親となります。

・人工授精で妊娠代理母は依頼者の男性(または提供者)の精子で人工授精を行い、妊娠・出産します。

・法的、倫理的な複雑性代理母が遺伝的に赤ちゃんとつながることで、親子関係の法的・倫理的な問題がより複雑になる可能性があります。

②「妊娠代理出産(ホストマザー型)」

・依頼者(またはドナー)の卵子と精子を使用ホストマザー型では、依頼者(または提供者)の受精卵を代理母の子宮に移植するため、代理母と赤ちゃんの間に遺伝的な繋がりはありません。

・体外受精で作成された受精卵を移植体外受精で作成された受精卵を代理母の子宮に移植することで、代理母は妊娠・出産します。

・法的、倫理的な複雑性は相対的に低い代理母が遺伝的に赤ちゃんとつながらないため、親子関係の法的・倫理的な問題は伝統的代理出産と比べて単純化される傾向にあります。

サロゲートマザー型 < ホストマザー型

上記のように、代理出産は①サロゲートマザー型と②ホストマザー型に分別でき、1980年代以降は、②ホストマザー型が主流となっています。

例えば、世界的に見て代理出産の法整備が発達しているウクライナの現行法でも、

①サロゲートマザー:違法 代理母が赤ちゃんと遺伝的な繋がりを持つ代理出産は違法

②ホストマザー:合法 代理母と赤ちゃんの間に遺伝的な繋がりを持たない代理出産は合法

です。したがって、私達代理出産エージェントBFYが提供している代理出産サービスも代理母さんは赤ちゃんと遺伝的な繋がりを持たないケース(妊娠代理出産、ホストマザー)に限られています。

代理出産への誤解(俗説)

代理出産は、クリニックの研究室で、体外受精(IVF)と呼ばれる高度生殖医療技術(ART)を用いて行われる不妊治療です。いまだに『代理母は他人の子供を妊娠するために好きでもない男性とセックスをしなけれならない』という誤った俗説を見聞きすることがあります。

代理出産『賛成』と『反対』

さて、それでは代理出産の倫理的問題の核心に少しずつ迫ってまいりましょう。代理出産は、現代社会にとって複雑で物議を醸すプロセスであり、さまざまな意見や感情を呼び起こします。その一方、不妊治療の可能性を多くの人々に開き、妊娠や出産を妨げる生理的な制限に関係なく、自分の家族を持つという夢を実現させる技術でもあります。

・反対派

代理出産は、母性の一体性を分断し、家族関係を混乱させます。子供は複数の親との関係に悩まされ、生んだ親を奪われたまま育ちます。利他的であれ商業的であれ、代理母制度は倫理的に正当化できるものではなく、代理母の人権や尊厳や健康上のリスクを鑑みず、子供の福祉や家族の一体性が脅かされるため、禁止もしくは制度の見直しが必要であると考えます。

・賛成派

不妊の夫婦にも子どもを持つ権利があります。現代の医学(高度生殖医療技術:体外受精や代理出産)を利用する権利もあります。また、代理母となる女性の自己決定権を尊重すべきです。代理出産は関係者全員の合意の下で行われるべきですし、各国の法律や規制を遵守し、合法的な支援体制も整備されるべきであると考えます。

このように、反対派と賛成派の意見は真っ向から対立しています。

代理出産の倫理的問題として挙げられる例

代理出産の主な倫理的問題点をまとめておきましょう。

①代理母の身体的・精神的リスク

・妊娠・出産に伴う健康上のリスク ・代理母の人権や尊厳が脅かされる可能性

②子どもの福祉

・アイデンティティの問題 ・家族関係の複雑化による心理的影響

③商業化の懸念

・経済的に脆弱な女性の搾取 ・代理出産の商品化や市場化

④法的・社会的問題

・親子関係の法的定義の曖昧さ ・国籍や相続権などの法的問題

⑤生殖技術の倫理

・人間の尊厳や家族の在り方への影響 ・生殖医療技術の適切な利用と規制の必要性

⑥不妊夫婦と代理母の関係性

・権力関係の不均衡 ・情緒的な結びつきや将来的な関わり方

⑦社会的な影響

・伝統的な家族観や価値観への影響 ・代理出産に対する社会的スティグマ

⑧宗教的な影響

・生命の創造や家族の在り方に関する宗教的教義との対立 ・代理出産が神の意思に反するとの見方 ・宗教的コミュニティ内での受け入れや支援の問題

代理出産にはこれらの倫理的問題が挙げられます。賛成派は、代理出産(即ち、高度生殖補助医療を用いた不妊治療)への理解を得ていくために、反対派の意見に耳を傾け、関係者全員の権利と尊厳を守るための適切な対策が講じていくべきと言えるでしょう。

倫理的問題を踏まえた上での『現実』

代理出産の倫理的問題(様々な立場からの意見)を踏まえた上で、現実はどうなのかも見ていく必要があるでしょう。

・代理出産『合法』な国が存在します

各国で代理出産に対する法律は異なります。合法な国、違法な国、部分的に違法な国、法律のない国、様々です。しかし一般的に言えるのは、代理出産が合法で、商業ベースの代理出産を営んでよく、世界中から利用者が訪れている国はごく少数です。アメリカ(一部の州は違法)、ウクライナ、ジョージアなどです。欧州、アジア、南米などにも合法な国はありますが、卵子提供が違法であったり、商業ベースの代理出産が違法であったりと、制限があり、より複雑であるため、トラブルが発生しやすくなります。

・代理出産の市場規模は拡大中です

Global Marketing Insightsによると、世界の代理出産市場は、2022年に140億ドル(約2兆2000億円)以上と評価されており、2023~2032の10年間にかけて24,5%以上のCAGR(年平均成長率)が見込まれています。

同機関によると、代理出産の市場規模は、 2022年 140億ドル(約2兆2,000億円) 2025年 275億ドル(約4兆3,500億円) 2032年 1,290億ドル(約20兆円)10年後には10倍近くに拡大されると予想されています。

・不妊症患者の数が増加しています

アメリカ生殖医学会(ASRM)によると、男性の30%が不妊に苦しんでおり、不妊症全体の5分の1を占めています。アメリカ疾病管理予防センター(CDC)の推定では、15~44歳の女性の12,1%が妊娠できないとされています。ホルモンの不均衡、精子の生産能力の減少、優れた不妊治療技術への関心の高まりによって、代理出産(クリニックの研究室で、体外受精IVFと呼ばれる高度生殖医療技術ARTを用いて行われる不妊治療)を選ぶ患者が増加しています。

・優れた代理母が足りていません

国によっては、優れた代理母、経験豊富な代理母が大幅に不足している傾向があります。代理母は誰でもなれるわけではなく、厳しい基準と何重にも及ぶ審査(スクリーニング)を通過した女性の中から、夫婦(依頼主)の希望に沿った優れた女性が選ばれます。

・代理出産の価格は上昇しています

代理母の不足に伴い、代理母への報酬は上がり、代理母を見つけ出す価格も上昇しており、結果として代理出産サービス全体の価格が上昇しています。それに加え、欧米各国の物価上昇(インフレーション)、円安などの傾向によって、日本人にとっては年々代理出産を利用する金額が上がっています。

代理出産と倫理的問題のまとめ

代理出産の是非に関する議論をまとめると、関連するすべての論争を解決するために、すべての関係者の権利と幸福を考慮した包括的なアプローチが必要であることが分かります。代理母、子供の両親、生まれてくる子供を含むすべての当事者の利益が守られなければなりません。そして、代理出産の利用は、相互の同意、自発性、十分な補償、医学的管理に基づくべきであり、濫用や搾取を防ぎ、関係者の権利と福祉の保護を確保するために、より良い法的枠組みへと改善し続けるすべきです。

代理出産契約は女性に感情を要求するものではなく、一定の行動を要求するものであり、女性の感情に反する行動を要求し、子供を身ごもり出産するプロセスではありません。強制はなく、契約の当事者は契約するかどうかを自由に決めることができます。例え、代理母が経済的に脆弱な状況にあったとしても、功利主義の観点からすれば、代理母出産契約は、代理母と子供の両親の双方が何らかの利益を受けるため、公平であると言えます。双方が自発的に同意し、当事者の一方の福祉を侵害しないのであれば、この関係は公正であり、プロスポーツ選手とクラブとの契約に近いものです。

代理出産とは子どものいない夫婦を救う方法なのでしょうか?それとも社会的モラルを低下させる行為なのでしょうか?今日そこに1つの明確な答えはありません。

『代理出産を禁止しろ!』と提案する人もいます。しかしそれで問題が解決するのでしょうか?それはむしろ、この問題を日陰に追いやり、現在存在するすべての困難(不妊問題)を悪化させるだけではないでしょうか?

私達BFYは、合法的にすべての当事者の立場を尊重した代理出産サービスを提供するエージェントとして、これからも不妊に悩む夫婦に寄り添っていきたいと思います。

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