2024-07-01
着床前遺伝子診断(PGD)の方法や費用を解説
近年、着床前遺伝子診断(PGD)が注目されています。
着床前遺伝子診断とは、体外受精で作られた受精卵の中から、遺伝的な疾患や障害のリスクが低い受精卵を選別し、それを子宮に移植する技術です。また、着床前遺伝子診断と代理出産を組み合わせれば、より短期間で健康な赤ちゃんを授かることができるというメリットもあります。
本記事では、着床前遺伝子診断の費用や適応症、方法や流れ、メリット・デメリットについて詳しく解説します。
着床前遺伝子診断(PGD)とは
着床前遺伝子診断とは、体外受精の過程で行われ、受精卵の遺伝子を調べ、健康な受精卵のみを選別して子宮に移植する検査です。これにより、重篤な遺伝性疾患を持つ子どもを出産するリスクを最小限に抑えることができます。
着床前遺伝子診断は倫理的な問題も指摘されていますが、遺伝性疾患のリスクを下げられるなどのメリットも大きいです。
着床前遺伝子診断(PGD)の対象者
日本国内では、着床前遺伝子診断は誰でも受けられるわけではありません。日本産科婦人科学会では、着床前遺伝子診断は個別審査により対象者のみが受けられる医療行為と決められています。
直近の2回の胚移植が妊娠しなかった場合や、過去2回以上の流産歴、夫婦のどちらかが染色体の構造異常を有しているなど、重篤な遺伝性疾患に罹患した胎児の出生リスクの高い夫婦が着床前遺伝子診断の対象者となります。
着床前遺伝子診断(PGD)の費用
着床前遺伝子診断(PGD)は保険適用外の自費診療となるため、総額で300万円前後が一般的な費用となります。検査内容によって遺伝子解析の手法や検査の回数などが異なるため、費用は変動します。
着床前スクリーニング(PGS)との違い
着床前遺伝子診断と着床前スクリーニング(PGS)は、体外受精の過程で受精卵の遺伝子を調べるという点で共通していますが、その目的と対象は異なります。
着床前遺伝子診断は特定の遺伝性疾患の有無を確認し、健康な受精卵のみを選別することが目的です。
一方、着床前スクリーニング(PGS)は染色体異常の有無を調べ、より健康な受精卵を選別することが目的です。
具体的な違いは以下の通りです。
項目 |
着床前遺伝子診断(PGD) |
着床前スクリーニング(PGS) |
目的 |
特定の遺伝性疾患の有無を確認 |
染色体異常の有無を確認 |
対象 |
家族に遺伝性疾患がある場合 |
高齢出産や反復流産など |
検査項目 |
特定の遺伝子変異 |
全染色体の異常 |
検査精度 |
より高精度 |
比較的精度が高い |
このように、着床前遺伝子診断はより特定の目的に特化した検査であり、着床前スクリーニングはより広範囲な染色体異常をスクリーニングする検査といえます。体外受精を行う際は、自身の状況に合わせてどちらの検査が適切かを検討しましょう。
出生前診断との違い
出生前診断(出生前スクリーニング)と着床前遺伝子診断は、ともに胎児や受精卵の遺伝情報を調べる検査ですが、大きな違いがあります。
出生前診断は、妊婦の腹部から採取した羊水や絨毛を検査して、胎児の遺伝子情報を調べます。一方、着床前遺伝子診断は体外受精で作られた受精卵を調べて、健康な胚を選別します。つまり、着床前遺伝子診断は出生前ではなく着床前の段階で行う検査なのが特徴です。
また、出生前診断は既に妊娠している段階で行うのに対し、着床前遺伝子診断は妊娠前の体外受精の過程で実施されます。そのため、着床前遺伝子診断では遺伝病のリスクの高い夫婦が健康な胚を選んで妊娠することができます。
項目 |
着床前遺伝子診断(PGD) |
出生前診断 |
検査のタイミング |
妊娠前 |
妊娠中 |
検査対象 |
受精卵 |
胎児 |
検査方法 |
体外受精時の遺伝子検査 |
羊水検査など |
目的 |
健康な胚の選別 |
胎児の遺伝子情報の確認 |
このように、着床前遺伝子診断は出生前診断よりも早い段階で遺伝子検査を行うことができるため、遺伝病のリスクが高い夫婦にとって有効な選択肢となっています。
着床前遺伝子診断(PGD)の方法・流れ
着床前遺伝子診断では、まずは事前の遺伝カウンセリングを受けることが重要です。その後、以下のような流れで診断を進めます。
- 事前の遺伝カウンセリング
- 体外受精と受精卵の採取
- 遺伝子検査と健康な胚の選別
- 胚移植
以上のように、着床前遺伝子診断はさまざまな専門家の協力のもと、慎重に行われる検査・治療プロセスとなっています。それぞれの点について詳しく見ていきましょう。
事前の遺伝カウンセリング
着床前遺伝子診断を受けるには、事前の遺伝カウンセリングが必須です。医療スタッフが患者の家族歴や遺伝に関する情報を丁寧に聞き取り、遺伝的リスクを検査します。具体的には、家族歴、遺伝検査、生活歴、倫理的・精神的側面などを確認し、着床前遺伝子診断の適応の有無や留意点を明確にします。事前のカウンセリングを通して、患者自身の状況を深く理解した上で、着床前遺伝子診断の選択をすることが重要です。
体外受精と受精卵の採取
着床前遺伝子診断では、まず体外受精を行います。体外受精とは、体外で精子と卵子を受精させ、受精卵を作る技術です。
医師は女性の卵巣から卵子を採取し、男性から採取した精子と受精させます。受精した卵子(受精卵)は、2〜3日間培養されます。
遺伝子検査と健康な胚の選別
受精卵から数個の細胞を取り出し、遺伝子検査を行います。この検査により、遺伝性疾患や染色体異常の有無を調べることができます。検査の結果、健康と判断された受精卵のみを選別し、子宮に戻す胚移植を行います。
具体的な流れは以下の通りです。
- 体外受精で受精した卵子から、細胞を取り出す
- 取り出した細胞の遺伝子を分析し、遺伝性疾患の有無を調べる
- 遺伝子に異常がない健康な受精卵を選別する
- 選別した受精卵を子宮に戻す胚移植を行う
この遺伝子検査と健康な胚の選別により、遺伝性疾患を持つ可能性のある受精卵を排除し、健康な赤ちゃんを得ることができます。ただし、検査の精度には限界があり、100%の確実性はありません。
胚移植
選別された胚は子宮に移植されます。胚移植は通常の体外受精と同様の方法で行われます。子宮の状態を確認し、最適な時期に柔らかいカテーテルを使って胚を移植します。複数の胚を移植することもあるでしょう。
移植後は、約2週間後に妊娠の成立を確認する血液検査が行われます。妊娠が確認できた場合は、通常の妊婦健診と同様のケアが行われます。
着床しない場合や流産する可能性もあるため、医療スタッフのサポートを受けながら次の胚移植に向けて取り組む必要があります。
着床前遺伝子診断(PGD)と代理出産を組み合わせるメリット
着床前遺伝子診断では受精卵の遺伝子検査を行い、健康な胚を選別することができます。そして、代理出産では女性の体力的・精神的負担を大幅に軽減できます。
本項目では、着床前遺伝子診断と代理出産を組み合わせるメリットをご紹介します。
- 短期間で健康な赤ちゃんを授かることができる
- 遺伝病や障害のリスクを下げられる
- 海外では男女の産み分けも可能
- 妻の体力的・精神的負担が大幅に軽減される
それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
短期間で健康な赤ちゃんが授かることができる
着床前遺伝子診断は、体外受精と組み合わせることで、短期間で健康な赤ちゃんを得られます。
体外受精で得た複数の受精卵から一部の細胞を採取し、遺伝子検査を行います。健康な受精卵のみを選別し、子宮に移植することで、高い着床率と短い妊娠期間を実現できるのです。
遺伝病や障害のリスクを下げられる
着床前遺伝子診断を行うことで、遺伝性の疾患や染色体異常を持つ受精卵を除外し、健康な受精卵を選別して移植することができます。
たとえば、ご夫婦のどちらかがデュシェンヌ型筋ジストロフィーや嚢胞性線維症、ハンチントン病などの遺伝性疾患を持っている場合、PGDを活用することで発症リスクを大幅に低減できます。
また、着床前遺伝子診断では単一遺伝子疾患だけでなく、ダウン症などの染色体異常を持つ受精卵も特定・排除することが可能です。
遺伝性疾患を持つご夫婦が子供を持つことを諦めなくて良くなるのが、着床前遺伝子診断や代理出産のメリットです。
海外では男女の産み分けも可能
着床前遺伝子診断を利用した代理出産では、健康な男児や女児を選別して出産することが可能です。一部の国では出産前の性別選択が合法化されており、希望する性別の赤ちゃんを授かることができるというメリットがあります。
たとえば、ウクライナでは男女の産み分けが合法化されており、着床前遺伝子診断と代理出産を組み合わせることで、短期間で希望する性別の赤ちゃんを得られます。
ただし、性別選別に関しては倫理的な問題も指摘されており、日本では未だ合法化されていないのが現状です。
妻の体力的・精神的負担が大幅に軽減される
通常の妊娠出産では、妊婦自身が9か月間の妊娠期間を経験し、出産時の痛みや体力的な負担を担うことになります。しかし、着床前遺伝子診断と代理出産を選択すれば、妻は妊娠・出産の過程をすべて代理母に委ねることができます。
健康な赤ちゃんを授かることができると同時に、妻の負担も最小限に抑えられるのが特徴です。
着床前遺伝子診断(PGD)のデメリット
着床前遺伝子診断にはさまざまなメリットがありますが、いくつかのデメリットも存在します。
- 倫理的な問題
- 精度は100%ではない
- 費用が高額
利用を検討する際は、以上の点を十分に理解しておきましょう。
倫理的な問題
着床前遺伝子診断では健康な胚を選別する一方で、障害のある胚を廃棄することになります。これは障害者の人権や生命を尊重する観点から問題視される可能性があります。また、性別選別目的で着床前遺伝子診断を利用することは男女差別につながるとの指摘もあります。
さらに、着床前遺伝子診断を受けられるのは経済的に余裕のある一部の人に限られるため、経済的な格差が生み出される懸念もあります。健康な子どもを持つ機会が経済的理由で制限されるのは公平性の観点から問題です。
着床前遺伝子診断の適用範囲や遺伝子選別の是非など、さまざまな視点から検討を重ねていく必要があるでしょう。
精度は100%ではない
着床前遺伝子診断の精度は80〜90%程度と非常に高いですが、結果は100%確実ではないということは理解しておきましょう。健康と判断された胚に予期せぬ遺伝的問題が見つかる可能性も少なからずあり、対象とする疾患はなくとも、ほかの染色体異常症などを持った子どもが生まれる可能性もあります。
費用が高額
着床前遺伝子診断は健康な子どもを授かることができる可能性が高まるというメリットがありますが、費用は健康保険の適用外であり自費診療となり、一般的に高額です。体外受精や遺伝子検査の費用を合わせると、100万円以上かかるといわれています。さらに、着床前スクリーニング(PGS)と組み合わせる場合は、さらに費用がかかるでしょう。代理出産を選択すれば、それらの費用も必要になります。
なお、「Baby For You」では代理出産とあわせて着床前診断をご利用される場合、着床前診断を低価格でご提供しています。
受精卵の個数にも左右されますが、平均的な価格として30万円〜50万円にて、ご提供できておりますので、経済的な事情で悩まれている方は、ぜひ「Baby For You」にご相談ください。
代理母出産エージェント「Baby For You」とは
「Baby For You」は、代理母出産のプログラムを提供している専門のエージェントです。不妊治療や出産に悩む方々に対し、安全で確実な代理母出産のサポートを行っています。代理母出産プログラムでは、以下のようなサービスをご用意しております。
- 代理母出産プログラム
- 着床前診断・男女産み分けプログラム
- 卵子提供プログラム
- 精子卵子提供プログラム
それぞれの内容を詳しくご紹介します。
代理母出産プログラム
代理母出産プログラムでは、健康な卵子や精子を使って体外受精を行い、代理母が赤ちゃんを出産するというサービスです。代理母出産に際しては、以下のようなステップを踏みます。
- 代理母の選定
- 卵子・精子の提供者の選定
- 体外受精と胚移植
- 代理母への胚移植
- 出産後の法的手続き
代理母の選定においては、健康で安全に出産できる女性を慎重に審査し、選定します。さらに、着床前遺伝子診断と組み合わせることで、遺伝病や障害のリスクも最小限に抑えられます。
着床前診断・男女産み分けプログラム
「Baby For You」では、着床前診断と男女産み分けのプログラムを提供しています。着床前診断では、体外受精で得られた受精卵の遺伝子検査を行い、健康な胚のみを選別して移植します。本記事でご紹介してきた通り、着床前診断を受けることにより遺伝性疾患や障害のリスクを大幅に低減できます。
一方、男女産み分けプログラムでは、検査で性別を確認した上で希望の性別の胚を選んで移植することが可能です。海外では男女産み分けニーズが高く、「Baby For You」ではこれにも対応しています。
卵子提供プログラム
妻の子宮は正常であっても卵子が妊娠に適していない場合は、卵子提供プログラムをおすすめいたします。卵子提供プログラムの成功率は高く、エッグドナーの卵子提供を受けて、移植した場合の1回の移植による妊娠率は50%〜60%ほどです。
ご夫婦が最善の条件の卵子ドナーと出会えるように、日本人と似た容姿のアジア系の女性の卵子ドナーのご紹介を行っております。
第三者提供の精子や卵子を用いる場合は遺伝的につながりのない子どもが生まれるため、事前の十分な医学的・心理的なカウンセリングが不可欠です。「Baby For You」では、カウンセリングを通じて、提供者の選定や治療の流れ、倫理的な問題など、依頼者さまに合わせたきめ細かなサポートを行っています。
精子提供プログラム
無精子症と診断された方や、夫に病気や遺伝病があり、お子さまへの遺伝を希望されない場合には精子提供プログラムをご用意しております。
精子提供プログラムの成功率は奥さまの年齢と卵子の質の状態により変わりますが、受精卵の中から最も質の良い受精卵(胚)を奥さまに移植することによって、妊娠の可能性を最大限に向上させます。
これらのプログラムを通じて、不妊に悩んでいる男性も健康な子どもを授かることが可能となります。
まとめ
着床前遺伝子診断は、体外受精の過程で受精卵の遺伝子検査を行い、特定の遺伝子異常を持たない健康な受精卵を選別して移植することで、遺伝性疾患のリスクを低減できます。しかし、費用が高額なことや倫理的な議論があるなどのデメリットもあります。
着床前遺伝子診断)を選択する際には、リスクとベネフィットを慎重に検討することが重要です。
代理出産と組み合わせれば、短期間で健康な赤ちゃんを授かることができるというメリットもあります。「Baby For You」では、代理出産をはじめ、着床前診断や男女産み分けプログラムなどを提供しています。不妊や遺伝性疾患にお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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