2024-11-18
代理出産の倫理的問題とは?親子関係・人権・搾取について考察
近年、少子化が深刻な社会問題となっている日本では、子どもを持つことを諦めざるを得ない夫婦が増えています。不妊治療の技術は進歩しているものの、それでもなお、生物学的に子どもを持つことが難しい夫婦も存在します。そのような中で、代理出産は、子どもを持つことを希望する夫婦にとって、一つの選択肢として注目を集めています。
しかし、代理出産には依頼主・代理母・生まれてくる子どもを取り巻く倫理的問題があります。
この記事では、代理出産の倫理的問題点、各国の法的規制などについて詳しく解説し、倫理的で安全な代理出産のあり方について考えていきます。
代理出産を取り巻く現状|需要増加とその背景
近年、代理出産の需要は世界的に増加傾向にあります。
この背景には、以下のような要因があると考えられます。
- 不妊症の増加
晩婚化や生活習慣の変化に伴い、不妊に悩むカップルが増加しており、子どもを持つための選択肢として代理出産を選択するケースが増えています。
- 生殖補助医療技術の進歩
体外受精や顕微授精といった技術の進歩により、代理出産の成功率が向上し、より現実的な選択肢として認識されるようになったためです。
- 同性カップルによる家族形成のニーズの高まり
多くの国で同性婚が合法化されるなど、同性カップルが子どもを持つことに対する社会的受容が広がる中、代理出産は彼らにとって重要な手段となっています。
加えて、一部の国では、代理出産を利用しやすい法的環境や費用的なメリットがあることも、需要増加の要因となっています。このように、代理出産を取り巻く状況は社会の変化や技術の進歩と密接に関連しており、今後も需要は増加していくと予想されます。
代理出産の定義と種類
代理出産には、以下のような種類と方法の違いがあります。
- ホストマザーとサロゲートマザー
- 商業的代理出産と非商業的代理出産
それぞれの違いについてみていきましょう。
ホストマザーとサロゲートマザー
代理出産において、「ホストマザー」と「サロゲートマザー」という言葉が使われますが、この2つの用語には明確な違いがあります。それぞれの定義を理解することは、代理出産の倫理的問題点を考える上で非常に重要です。
ホストマザーとは、夫の精子とドナーの卵子、または妻の卵子とドナーの精子による受精卵を体内に移植して実施する代理出産のことを指します。そのため、生まれてくる子どもは夫婦のどちらかと遺伝的なつながりを持つこととなります。
一方、サロゲートマザーとは、依頼主ご夫婦の精子と卵子から作られた受精卵を体内に移植し、出産する代理出産のことを指します。サロゲートマザーで生まれた子どもは、100%依頼主ご夫婦との遺伝的つながりを持つ赤ちゃんとなります。
代理出産と遺伝的なつながりについては、以下の記事で詳しく解説しています。
『代理出産では代理母との遺伝的つながりはどうなる?安全な実施方法を紹介』
商業的代理出産と非商業的代理出産
また、代理出産は商業的代理出産と非商業的代理出産の2種類に分類することもできます。
この2つの違いは、代理母への金銭的報酬の有無にあります。商業的代理出産とは、代理母が金銭的報酬を得る目的で代理出産を行うことで、費用は数百万円から1,000万円以上に及ぶこともあります。アメリカの一部の州やウクライナ、ジョージアなどいくつかの国では商業的代理出産が合法化されています。しかし、高額な報酬が貧困層の女性を搾取する可能性や、子どもの売買につながる懸念があることから、倫理的な問題も指摘されています。
一方、非商業的代理出産は、代理母が金銭的報酬を受け取らず、善意に基づいて代理出産を行う形態です。イギリスやオーストラリア、カナダなど、多くの国では、非商業的代理出産のみが認められています。
しかし、非商業的代理出産は金銭的な報酬が発生しないため、代理母を見つけることが難しいという課題も存在します。商業的、非商業的どちらの代理出産においても、依頼者と代理母の間で明確な契約を結び、双方の権利と義務を明確にすることが重要です。
代理出産における倫理的問題点
代理出産には、以下のような倫理的問題点があると指摘されています。
- 親子関係の定義の曖昧さ
- 代理母の権利と福祉
- 子どもの権利
- 社会への影響
全ての代理出産に、大きな倫理的問題があるわけではなく、正しく契約を結び安全な環境が保証されていれば、安全かつ倫理的な代理出産が可能です。しかし、倫理的問題を事前に理解しておくことで、誤った判断をしてしまったり悪質な代理母あっせん業者を選定してしまったりといったリスクを防げるでしょう。
それぞれの問題点について、詳しく解説していきます。
親子関係の定義の曖昧さ
代理出産では、親子関係の定義が曖昧になる可能性が指摘されています。
例えば、卵子提供を受けた代理母が出産した場合、遺伝的な母親は卵子提供者、出産した母親は代理母、そして子どもを育てる母親は依頼者となります。このように、遺伝的親子、出産した親子、育てる親子が異なるケースでは、法的な親子関係を明確に定義することが重要になります。
また、代理出産によって生まれた子どものアイデンティティにも影響を与える可能性があります。自分がどのようにして生まれたのか、誰が本当の親なのかという疑問を抱える可能性があり、心理的な負担となることも考えられるでしょう。そのため、代理出産における親子関係は、子どもの福祉も考慮しながら慎重に決定されるべきです。法律や倫理的な側面だけでなく、子どもの精神的な健康も考慮した上で、親子関係を定義するための明確な基準を設けることが重要です。
代理母の権利と福祉
代理出産において、代理母の権利と福祉は必ず守られなくてはなりません。代理母は、妊娠・出産という大きな負担を担うだけでなく、精神的なストレスにも直面することがあります。そのため、彼女たちの権利と福祉を尊重し、保護する必要があります。
代理母は、自分自身の身体の自律性を持つ権利と、適切な医療ケアを受ける権利があります。妊娠・出産に伴うリスクを最小限に抑えるため、定期的な健康診断や必要な医療処置を受けられる環境が不可欠です。さらに、代理母は、プライバシー保護の権利も有しています。個人情報や医療情報は、厳密に管理され、本人の同意なく開示されるべきではありません。
商業的代理出産における経済的な搾取も懸念される問題です。代理母への報酬は、彼女たちの負担に見合った適切な金額であるべきです。過度に低い報酬や、契約不履行による未払いといったトラブルが、倫理的問題として指摘されています。代理母が経済的な困難に陥ることなく、安心して妊娠・出産に臨めるよう、公正な報酬システムを確立しなくてはなりません。
子どもの権利
代理出産では、大人の都合だけではなく子どもの権利についても慎重に考える必要があります。代理出産によって生まれた子どもは、遺伝的な親、妊娠・出産した代理母、そして子どもを育てる意思を持つ依頼者の間で複雑な関係が生じ、倫理的問題につながる懸念があります。
この複雑な関係の中で、子どものアイデンティティや出自を知る権利、適切な養育を受ける権利、相続権など、様々な権利がどのように保障されるべきかが課題となります。
代理出産によって生まれた子どもの権利を適切に保障するためには、代理出産に関する法制度の整備、子どもの権利に関する倫理的な議論の深化、そして関係者への十分な情報提供とカウンセリングが不可欠です。
社会への影響
代理出産が、社会全体に与える影響も無視できません。
代理出産が広く容認されるようになると、妊娠・出産がビジネス化し、子どもを「商品」とみなす風潮が助長されるという倫理的問題があります。子どもは愛情に基づいて家族に迎え入れられるべき存在であり、経済的な取引の対象となるべきではありません。
また、貧困層の女性が経済的な理由から代理母となることを強いられる可能性も懸念されます。これは、彼女たちの健康や福祉を危険にさらすだけでなく、社会の格差をさらに拡大させる可能性も孕んでいます。
これらの変化が社会にどのような影響を与えるのか、慎重に見極める必要があります。代理出産は個人の問題にとどまらず、社会全体の倫理観や価値観に関わる問題であることを認識し、社会全体で議論を深めることが重要です。
各国の代理出産に対する法的規制と現状
代理出産の法的規制は、国によって大きく異なり、その現状は複雑です。
国によって、代理出産を認めている国、法規制によって全面禁止としている国、一定の条件下で認めている国といった違いがあります。その原因は、宗教的な考えの違いや犯罪の予防などさまざまです。
なお、日本国内では、日本産婦人科学会が「代理出産を認めない」という声明を発表しているため、代理出産できる医療機関が無いという状況ですが、明確に法律で禁止されているわけではなく、グレーな扱いとなっています。
日本国内における代理出産の状況については、以下の記事で詳しく解説しています。
代理出産を認めている国と禁止している国
代理出産を全面的に禁止している国として、イタリアが挙げられます。イタリアでは元々、国内での代理出産が禁止されていましたが、イタリア人カップルが国外で代理出産を実施することも禁止とする法案が2024年10月に成立しました。
参考:イタリアが代理出産を全面禁止 国外の利用も違法、性的少数者ら反発
その他に、法規制によって国内での代理出産を禁止している国として、
- ドイツ
- フランス
- スイス
- オーストリア
- デンマーク
などが挙げられます。
一方、代理出産を認めている国は、
- アメリカ(一部の州)
- ロシア
- ギリシャ
- ウクライナ
- カザフスタン
- ジョージア
などです。
このように、代理出産に対する法的規制は国によって大きく異なり、複雑な状況となっています。代理出産を検討する際には、関係国の法律を慎重に確認することが不可欠です。
商業的代理出産を認めている国について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
『商業的代理出産を認めている国一覧。安全な代理出産を行える国とは』
倫理的で安全な代理出産のあり方とは
さまざまな宗教的な考えや文化の違いから、代理出産そのものに倫理的問題があるという指摘は見過ごせません。しかし、正しく法整備が行われ、安全な契約に守られたうえで実施された代理出産で、多くの夫婦にとって念願の我が子との対面が実現できていることもまた事実です。
実際に、日本人夫婦が代理出産が認められている国に渡航して代理出産を行うことは可能です。その際に、倫理的問題が大きい代理出産を選んでしまわないよう、「どうすれば安全に代理出産ができるのか」のポイントを見ていきましょう。
法的な要件の整備
倫理的で安全な代理出産を実現するためには、明確な法的要件の整備が不可欠です。代理出産に関する法律が未整備である場合、当事者間のトラブルや子どもの権利の不確実性など、さまざまな問題が生じる可能性があります。法的要件を整備することで、代理出産に関わる全ての人々の権利と福祉を守り、より安全で透明性の高いプロセスを確立することができます。
ウクライナやカザフスタン、ジョージア等では、外国人カップルの渡航による商業的代理出産でも、親子関係が認められ安全に戸籍取得ができる法整備が行われています。
代理母の権利を侵害しない契約
安全な代理出産のためには、代理母の権利を尊重し、搾取や不当な扱いから保護するための契約内容が不可欠です。契約においては、代理母となる女性の身体的・精神的健康を最優先に考慮しなければなりません。
代理母は妊娠・出産に関する十分な情報提供を受け、そのリスクとメリットを理解した上で、自らの意思で契約を締結する権利があります。また、代理母が適切な医療を受けられるよう、契約内容には医療費の負担についても明確に定めることで、トラブルのない代理出産が実現できます。
その他、報酬面や産後のケアなども契約時によく話し合い、細部にわたる配慮を行うことで、代理母の権利が守られます。
高度な医療を安心して受けられる環境
倫理的な代理出産を実現するには、高度な医療を安心して受けられる環境の整備が不可欠です。代理出産は母体への負担も大きく、妊娠・出産に伴う様々なリスクが存在します。そのため、安全な代理出産のためには、高度な医療技術と設備を備えた医療機関の確保が重要となります。
代理母と依頼者の双方が安心して出産に臨めるよう、医療機関と連携した包括的なサポート体制の構築が必要不可欠です。
安全な代理出産にはエージェントを活用
ここまでに紹介してきたポイントを全て押さえ、海外での代理出産を行うのは、個人では困難です。そのため、海外での代理出産に精通し、代理母や医療機関との信頼関係を持つエージェントの活用が必須となります。
エージェントは、法律の専門家や医療機関との連携を取りながら、代理出産に関わる全ての関係者にとって最適な方法を提案します。適切な代理母の選定、安全かつ公平な契約の締結、医療機関の手配、代理母のケアなど、包括的なサポートを提供することで、依頼者と代理母双方の安全と安心を確保します。
なぜエージェントの利用が必要?
実際に海外で代理出産を行うにあたって、大きな課題となるのが言語です。エージェントは現地に駐在しているため、依頼主ご夫婦が渡航した際には通訳として医療機関とのコミュニケーションをサポートします。
また、生まれた赤ちゃんを我が子として迎えるための法的な手続きや出国のための申請などもエージェントが代行します。弁護士が在籍している会社なら、より安心できるでしょう。
このように、代理出産エージェントは、複雑なプロセスを円滑に進めるための重要な役割を担っています。専門家によるサポートを受けることで、依頼者と代理母は安心して出産に臨むことができ、倫理的かつ安全な代理出産を実現できるのです。
代理出産エージェントなら「Baby For You」
海外での代理出産を安心してお任せできる仲介業者をお探しなら、ぜひ「Baby For You」にご相談ください。
Baby For Youでは、これまでに多くの日本人ご夫婦へ赤ちゃんをお届けしてきました。会社組織として海外の医療機関と信頼関係を築き、弁護士も在籍している、実績のある代理出産エージェントです。
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Baby For Youは主にウクライナ、ジョージア、カザフスタンの医療機関と提携し、安心・安全な代理出産を行っています。
厳しい審査による健康な代理母の選定や、海外現地でのサポート、日本国籍を取得するための手続きなど、さまざまな面から依頼者さまをサポートいたします。
まとめ
代理出産は、子どもを望む人たちにとって大きな希望となる一方で、複雑な倫理的問題を孕んでいることも事実です。代理母となる女性の権利と福祉、生まれてくる子どもの権利、そして社会全体への影響など、多角的な視点からの理解が必要です。
倫理的で安全な代理出産を実現するためには、法的な整備はもちろんのこと、代理母の権利を尊重し、全ての関係者にとって不利益の無い契約が欠かせません。
日本人夫婦が代理出産を行うには、海外に渡航しなくてはならないのが現状です。ご検討中の方は、代理出産エージェント「Baby For You」にぜひご相談ください。
※本記事の内容は、2025年11月時点の情報に基づいて作成しています。今後、ルールや法律の変更により内容が事実と異なる場合もありますので、ご了承ください。
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